世界中の公海で漁を行う日本にとって重要な国際条約の存在

魚などの海の資源は、産卵によって世代交代が繰り返されますが、絶えず漁を行っているといずれは絶滅しまう恐れがあります。持続的に漁業をしていくためには、魚の修正や数を調べて、どれくらいとってよいのかを決め、その範囲の中で漁業を行うことが重要です。

各国と二国間協定も結んでいます

海岸線から200海里が沿岸国の排他的経済水域となったことにより、各国の漁船は以前のように、自由に世界の海で魚をとることはできなくなりました。他国の200海里水域で創業できるのは、沿岸国との間に、漁業協定などの取り決めがある場合だけです。

各国の200海里水域外では、海域ごとに、水産資源を管理するための国際条約が多国間で結ばれ、この条約に基づいた国際機関が各海域に置かれています。これらの国際機関によって、最近数の減少が心配されているまぐろ類について、国ごとにとってもいい漁獲量を決めるなどしています。世界中の公海でマグロ漁を行っている日本は、全ての機関に加盟しています。

200海里水域の設定により、遠洋漁業の生産量が減った日本は大量の水産物を海外から輸入しています。こうした輸入水産物についても、国際ルールを守ってとられたものであるのかを調査し、違反が見つかった場合には輸入しないなどの規制が設けられています。

大西洋まぐろ類保存国際条約…大西洋全域のまぐろ、かじき類が対象。42カ国と1機関が締結。漁獲枠のほか、地中海における養殖の監視なども行います。

みなみまぐろ保存条約…全世界のミナミマグロが対象。日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国の4カ国が締結。台湾も締結国に準じます。

国連公海漁業協定…公開・排他的経済水域にまたがって分布する、たら、マグロなど広い範囲を回遊する魚が対象。66カ国が締結。

国際捕鯨取締条約…南氷洋を含む全世界の海洋の13種類の鯨が対象。

このほかにも、海域が隣接しているロシア、中国、韓国などとは個別に二国間協定を結んでいます。

マグロの資源管理を行う国際機関(ICCAT、IATTC、WCPFCほか)

各国の領海あるいは排他的経済水域(EEZ)内にある漁業資源は、その国の資源と見なされていますが、EEZの外側の海洋にいる資源や数カ国間の領海を移動するマグロなどの回遊魚は人類共有の財産として、条約に基づく国債漁業管理機関で管理されています。

マグロの国際管理機関

この国際条約に基づいて各海域にはマグロの管理委員会が設けられています。大西洋には大西洋マグロ類国際保存委員会(ICCAT)、太平洋には全米熱帯マグロ類委員会(IATTC)と西部及ぶ中部太平洋における高度回遊性漁業資源の保存及び管理のための委員会(WCPFC)があります。

またインド洋にはインド洋マグロ類委員会(IOTC)があり、ミナミマグロは海域で区分されない南マグロ保存委員会(CCSBT)があります。

さらに北太平洋には、北太平洋におけるマグロ類及びマグロ類類似種に関する国際科学者委員会(ISC)があります。これは国際条約に基づいた委員会ではありませんが、日本、アメリカ、カナダなどの加盟国の合意に基づきWCPFCに委託されてマグロ類の資源評価を行うなど、マグロ管理委員会に準じた活動を行っています。

先述のIATTCは国際マグロ管理委員会の中では歴史が長く1947年に設置されました。マグロ漁業など公海資源を対象とした漁業は資源の奪い合いという側面が強いため、加盟国の漁業団体の思惑などもあって紛糾することがしばしばありますが、IATTCは事務局が多くの科学者を抱えているため、資源評価にも客観性があり、そこで出された結果が合意に至りやすいという特徴があります。ただし維持費がその分膨大になるという欠点があります。

これに対して1966年に設立されたICCATは異なる運営方式を取っています。ICCATの事務局には科学者が一人しかいません。ICCATの科学委員会は加盟国の科学者が参加し資源評価、管理勧告を行う方式となっています。議長も加盟国による選挙で決定されます。

資源評価会議は加盟国が多い割には1週間という短期で決定されるため、魚種によっては議論が紛糾することもしばしばです。ただし科学者を自前に雇用する必要がないので、運営費用は安いというメリットがあります。