自治体の研修生制度や全国漁業就業者確保育成センターの活用が近道

近年は漁業の世界も高齢者が進んでおり、後継者不足や重労働が敬遠されるなどの理由で漁業に従事する人は減少傾向にあります。しかし一方で、日本の食文化を支えるやりがいのある仕事でもあります。漁業を職業とするためには、どうすればよいのでしょうか?

後継者不足は全国で深刻

漁業の経験を一度もないまま、自分で船を持って独立することは無理です。まずは水産会社の従業員や乗組員、個人事業者の見習いなどの形で船に乗り込み、そこで漁業者としての仕事を始めることになります。

沿岸漁業については、一般的に漁業協同組合(漁協)が漁業権を管理しています。このため、漁業を職業とするためには漁協の正式な組合員になることが早道です。組合員になるためには、その地域に住所を置き、90~120日以上漁業に従事し、技術や経験を高めること大切です。

若い漁業者を育てるために、本格的な研修制度を設けている自治体、漁協もあります。例えば、島根県には漁業就業者確保育成センターがあり、ここで研修を受けた後、多くの人が県内で漁業者として働いています。しかし、県内の従業者の大半が60歳以上のため、根本的な人手不足の解決には至っておらず、まだまだ若い人材が必要です。

同県の「漁業研修生」制度は、研修生がまず実際に船に乗って一定期間漁業を体験し、船主と上手くやっていけるようだと、そのまま就職するという仕組みです。この研修は、雇う側と雇われる側の双方にとって、いわば「お試し期間」となっているため、就職後にすぐに辞めてしまうミスマッチが起こりにくいというメリットがあります。

独立を目指す人には、原則2年間、ベテラン漁業者を師として、毎日一緒に出漁し、働きながら技術を学ぶ研修も用意されています。また、希望者は全国漁業就業者確保育成センターを通じて、全国各地の漁協で歳代6ヶ月間の研修を受けることができます。

漁師への道のり

1.情報を集め漁業の種類を選ぶ…漁に行く場所(沿岸・沖合・遠洋)や、漁法などによって仕事の内容は様々です。インターネットや漁業関係の本などで情報を収集し漁業全体を知り、自分がどのようになりたいのかを考えることが第一歩となります。

2.漁場・住みたい土地を選ぶ…沿岸漁業はその地域に住んで行う漁業です。また沖合・遠洋漁業の吉も、主要なものだけで、全国に約40港あります。各地の漁協や全国漁業就業者確保育成センターなどに問い合わせ、どこに住み、どんな漁をしたいのかをより具体的に絞り込みます。

同センターのホームページでは、漁業についての情報や就業体験、求人情報などを見ることができます。就業希望者が一度に複数の漁業関係者と話をすることができる「漁業就業支援フェア」も毎年実施しています。

3.体験する…都道府県や市町村、漁協などが行っている漁業体験に参加します。実際に作業を行うことで、この職業が自分に向いているかどうかを判断する材料になります。全国漁業就業者確保育成センターでも、漁船に乗って1日体験する「漁業体験講習会」を開催しています。

4.就職する…資格や漁業の許可や漁業権などが必要となるため、すぐに独立して漁業者になることはできません。まずは水産会社に就職するか、個人事業者に弟子入りする形で仕事を始めます。