魚のエサとなるプランクトンが減少しているという研究結果があります

大気中に排出された二酸化炭素などの働きで、地球上の熱がためこまれ、地球の気温が上昇する「地球温暖化」は気候や海水温などに影響を与えはじめ、日本近海では海面温度が0.7~1.6℃上昇しています。

日本近海への影響も大

魚は、その種に適した水温の海域に集まるため、水温の変化は、魚の分布に大きな影響を与えます。例えば、温暖な海を好むサワラは、九州と瀬戸内海でよく取れる魚でしたが、日本海の水温が上昇したことで、より北の地域での漁獲量が増えています。

また、海面の温度が上昇すると、その水は軽くなり、海の表面に止まろうとします。すると、海面付近の水と深層の水が混ざりにくくなり、深海の栄養分が海面付近に行き渡らなくなります。このため、魚のエサとなるプランクトンが減少しているという研究結果もあり、漁業への影響が心配されています。

1980年代に日本近海で豊漁だったまいわしが、1990年代に入って、急にとれなくなりました。その理由のひとつは、「レジームシフト」と呼ばれる海洋の環境変化です。海洋の環境は、大きく30~50年の周期で変化しています。

日本近海でいえば、寒流である親潮の強い時期と、暖流である黒潮の強い時期が交互に現れます。この変化によって、親潮が強いときには冷水を好むイワシなどが、黒潮が強いときには暖水を好むカタクチイワシ、ゴマサバが多くなります。

こうした海洋の環境変化は、大気の状態とも密接な関係があります。例えば、太平洋の赤道付近の中央部から南アフリカのペルー沿岸にかけての広い海域で、海面温度が上昇する「エルニーニョ現象」が起きるのは、太平洋の赤道付近で吹いている「貿易風」という東風が弱まるからです。この減少が起こると、雲が発生する地域や周辺の降水量が変化し、広い地域の天候に影響を与えます。

エルニーニョ現象やレジームシフトは、地球温暖化とは別の減少ともいわれていますが、詳しくはまだ分かっていません。しかし、機構や大気の状態、海洋の環境は、互いに影響しあっているので、海の生物に、海洋環境の変化や地球温暖化の影響がさらに広がることが懸念されています。